2008年度総会報告 | 2007/07/16 |
2008年12月6日、京都精華大にて現代風俗研究会総会が開催されました。総会では、2009年度のテーマを「プロレスが残した風俗-世間にリングを、マットに社会を-(仮)」とし、岡村正史さんにより「力道山-プロレスと世間がリンクしていた時代-から始めよう!」と題した基調報告が行われました。
報告では、岡村さんの著作『ミネルヴァ日本評伝選 力道山』での研究成果を元に、プロレスと社会との関係について、力道山を手がかりに明らかにしていきました。岡村さんは、自著について「一般的なプロレスというものを目指して書いた」と述べます。既存の力道山を扱った書籍では、力道山の人間像、内幕、出自などについて書いたものがほとんどで、プロレスをきちんと描いていなかった点を指摘しました。
その上で、力道山の時代において、「世間はプロレスそのものに対し本当に魅力を感じていたのか?」という疑問を呈しました。そこで報告(および著作)では、力道山が、メディアを通してどのように報じられ、人々に受容されたのかについて資料をもとに考察を進め、日本におけるプロレス黎明期を描き出しました。
そこで明らかになったのは、力道山が「敗戦コンプレックス」や「反米」の文脈で人気を博したという一面も否定できないものの、伝える側のマスコミはプロレスをショーとして扱った一方で、社会的には「ショー的要素の強いスポーツ」として受容されていたということでした。
その後、力道山以後のプロレスの変化が紹介されました。力道山以後のプロレスは、高い人気を維持しつつも、街頭テレビの時代ほど熱狂している人はいないという情況になります。その人気も衰退していき、1988年には、プロレス中継がゴールデンタイムから転落し、プロレス団体の多団体化とともに表現の多様化が進みます。今日では、プロレスというジャンルが凋落した一方で、プロレスから派生した「格闘技」が人気を博しています。
しかし、プロレスというジャンルそのものが完全に消えたわけではありません。「タッグ」「デスマッチ」といったプロレス用語や、入場曲やコスチュームなどの演出のように、他のジャンルで、プロレスは今もしぶとく生き残り、影響を及ぼし続けています。そこで2009年の現風研では、プロレスそのものではなく、プロレスが現代においてどのように生き残っているのかをテーマとすることになりました。
報告や質疑応答の中で、「チョップはダメージよりも音が重要」「プロレスは約束事で成り立っている」「プロレスでは、相手が得意とするところは譲ってあげるものだ」といった話が出ました。世間では相撲の「八百長問題」が取りざたされていますが、プロレスはそういう世界であるとお見知り置きください。
また、ある程度プロレスの「仕組み」を理解しているファンたちは、様々なシナリオが存在するという前提でプロレスを見ています。テレビやメディアで報じられたプロレスの試合結果、選手間の遺恨、派閥抗争などを、そのまま鵜呑みにするファンは、極めて少ないと思われます。優れたメディアリテラシーを有するとも言えますが、基本的にひねくれた人種の集まりです。質疑応答では、このような「プロレス的な物の見方を生かせないか」という意見が出されましたが、それに対し「裏読みばかりで物事を解釈するのは面白くない」という批判もされました。
このテーマに何人が付いて来られるか心配だったのですが、基調報告では、プロレスに詳しく無い方々でも楽しめたそうです。プロレスに詳しい方も、よくわからない方も、1年間、ぜひご参加ください。(相原すすむ)
2008年度総会開催のお知らせ | 2007/07/16 |
社団法人現代風俗研究会の総会を以下の要領で開催します。年末のお忙しい時期だと存じますが、ぜひご出席願います。
日時 12月6日(土)
場所 京都精華大学 黎明館 L-103
※会場へのアクセス
http://www.kyoto-seika.ac.jp/access/index.html
※今までの会議室は別の学会が使用しますので、会場をお間違えないようお気をつけください。
■主な議題(予定)
(1)平成20年度事業報告及び収支決算についての事項
(2)平成21年度事業計画及び収支予算についての事項
(3)「橋本峰雄賞」発表・贈呈式
(4)その他
■プログラム
13:30~ 受付開始
14:00~15:00 総会・選挙
15:00~17:00 年間テーマ基調報告(約1時間)
17:30~ 懇親会
■年間テーマ基調報告
2009年度年間テーマ「プロレスが残した風俗」(仮)
「力道山―プロレスと世間がリンクしていた時代―から始めよう!」
講演:岡村正史(岡田正)
プロレスはいまやジャンルとしては衰退してしまったと言っていいでしょう。テレビのゴールデンタイムからはずれて20年になります。努力をしなければ手軽には見ることができないジャンルになりました。つまり、よほど熱心なマニア層の独占物に近い存在と化したのです。存在と化したのです。プロレスの話題を出すと、ファンは熱いトークを展開するものの、そうでない人はシラケる。そんな状態になってしまいました。つまり、一般的話題になりにくいジャンルであり、現代風俗研究会でも取り上げられることはけっして多くなかったと思います。
プロレスそのものは衰えたけれど、力道山がこのジャンルを日本に定着させてから50数年が経過しています。プロレスが日本社会に与えた影響って皆無なのでしょうか。
たとえば、タッグ、デスマッチ、場外乱闘、ヒールといった言葉はすっかり一般化しています。「ドロップキック」と聞いて、あなたはプロレスとラグビーのどちらを連想しますか。広辞苑にはラグビー用語としてしか載っていませんが、プロレスの技を連想する人の方が多いのではないでしょうか。永田町の政治の駆け引きって何かプロレスに似ていると思いませんか。そう言えば、レスラー出身の国会議員って多いと思いませんか。覆面をつけたまま県会議員をやった人すらいましたよね。あるいは、スポーツ選手が入場曲に合わせて登場する光景は当たり前になりましたが、これってプロレスが先鞭をつけたのです。
年間テーマを「プロレスが残した風俗」(仮)としましたが、プロレスを真正面から取り上げるのではなく、むしろプロレスから派生したもの、あるいは世間をプロレス的に見たらどのように語れるのか、などを追求したいと思っています。ひょっとすると、まったく新しい角度から日本の風俗を見る眼が得られるかもしれません。
プロレス好きも、プロレス嫌いもご参集ください。
12月6日は、とりあえず力道山の話から始めることにしましょう。
第5回例会「お祭り観光」 | 2007/07/16 |
かつて、柳田國男は、神様を祭ること(祭祀)が、庶民の祭り(祭礼)に成長する際、見物人の存在が重要だと説いた。そして祭礼の醍醐味は、神事ではなく、人々に見せるための風流(ふりゅう、付け祭り)だと言った。そんな、大御所の蘊蓄など、どうでも良い。多くの祭りやイベントは、やって楽しい、見て楽しい。神様が登場しない現代の祭りだって、十分、楽しい。
夏から秋に開催される、国内の観光ツアーに、お祭り見物(一部、体験を含む)が組み込まれている。お祭りを梯子するツアーも多い。イベント化した大規模な祭りの日程は、開催地が近い場合、上手い具合に、微妙にズレながら連続する。東北三大(四大)祭、四国の祭り…。お祭りを観光の目玉にする取り組みには、地元の人々だけでなく、観光庁を新設する政府や各自治体も熱心である。
今回は、現代のお祭り事情に詳しい文化人類学者が、話題を提供して下さいます。例会を「お祭り」の雰囲気にすべく、皆様、お召し物ほか一工夫してお運び下さい(文責 内田忠賢)。
日時 2008年9月13日(土)14~17時
報告 ; 阿南透さん(江戸川大学・教授)
コメント : 濱千代早由美さん(皇學館大学・講師)
関連本紹介 : 塩島あゆ子さん(奈良女子大・学生)
場所 : ウイングス京都 ビデオシアター
http://www.wings-kyoto.jp/01wings/03access.html
※いつもと開催場所が異なります。ご注意下さい。
第4回例会「ガイドブック」 | 2007/07/16 |
旅先で、ガイドブックに載っていた写真と同じ風景を目にして、素朴に感激している自分に驚くことがあります。それやったら、旅行、行かんでも、エエんとちゃうの?と自ら突っ込みを入れます。観光人類学でよく使う実例ですが、旅なれた地理学者の私も逃れられません。
一方、そんな世俗的な感激こそ、物見遊山の醍醐味やないかと開き直りたくなります。ガイドブックに振り回される人、ガイドブックを徹底研究・活用する人。それに対して、ガイドブック側も、制作に一工夫、二工夫を凝らします。
人生色々、ガイドブックも色々。京都のガイドブックで、最近、新機軸が登場しました。ワンテーマ、ワンコインの文庫版ガイドブック、らくたび文庫。商品、飲食店とのタイアップを優先しない、ユニークなガイドブック。その誕生の裏側を垣間見たいと思います。乞ご期待(文責・内田忠賢)。
・日時 2008年7月19日(土)14~17時
・報告
山村純也さん(京の旅企画・㈱らくたび代表)
「ポケットに京都ひとつ:らくたび文庫誕生と新展開」
・コメント
常見耕平さん(多摩大学・教員)
・場所
徳正寺さん(下京区 市場富小路下る)
http://www.genpoo.org/images/map.JPG
・非会員の方のお問い合わせは、ホームページからお願いします。会員の方は、会報に掲載している内田先生のアドレスか、事務局もしくはホームページからお問い合わせください。
2007年9月例会案内 | 2007/07/16 |
例会テーマ
「余は如何にして街角観測者となりし乎」
日時:2007年9月29日(土)14時~
場所:徳正寺さん(京都市下京区富小路四条下ル)
従来から、例会に「参加型」を取り入れたいと考えておりました。
そこで、最終回は参加者全員で観測を行い(無理強いはしませんのでご安心のほどを)、その結果について報告(自慢?)しあいながら、「観測」とは何かについて考えていきたいと思います。
さあ、みなさんも秋の京都でdetectiveな時間を過ごしてみませんか。
蛇足ですが、例会のタイトルに内村鑑三の著書名を拝借しました。これを拝借して本のタイトルにしているもの多いですね。
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